Blog

ブロックチェーン時代の金融システムーブロックチェーン債のインパクトー

はじめに

先日、世界初のブロックチェーン債が発行される、というニュースが出ました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34563730U8A820C1EA2000/

世界銀行が初めて発行する、ブロックチェーンを用いた債権の発行。

ここから想定される、ブロックチェーンと金融が融合した「ブロックチェーン金融」に関しての1考察をまとめてみました。

ブロックチェーン債「bond-i」の概要

まず今回発行されたブロックチェーン債のプロフィールを確認します。

債権名  bond-i
発行体  国際復興開発銀行(IBRD)
発行体格付 Aaa/AAA
起債額 1億1千万豪州ドル
単独アレンジャー オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)
決済日 2018年8月28日
償還日
2020年8月28日
クーポン 年率2.20% (年二回払い)
発行価格 99.901%
投資家利回り 2.251%(年二回利払い)

発行体は、国際復興開発銀行(IBRD)という世界銀行グループの銀行です。

資金調達目的は、世界初のブロックチェーン債を用いた途上国支援とされています。

債権発行の主幹事をオーストラリアのコモンウェルス銀行(CBA)が一手に引き受けています。

bond-iに投資を行ったのは、CBA、First State Super、ニュー・サウス・ウェールズ財務公社、ノーザン・トラスト、QBE、南オーストラリア州金融公社、ビクトリア州財務公社等、オーストラリア機関です。

Ethereum のプライベートブロックチェーンを用いたブロックチェーンを、債券の発行、販売、決済などの全行程に使用しています。

ブロックチェーン債のメリット

それでは、ブロックチェーン債を用いた資金調達にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

それは、「効率的な債権発行システムを作ることができる」ことにあるでしょう。

中央集権的な主体が存在しなくても、ネットワークによって信頼性の高い取引ができるという特徴を用いることによって、債権発行に関わる仲介業者の存在を極力排することができます。

これにより、以前より低コストで債権の発行をすることが可能になります。

例えば、日本において社債を発行する場合、証券会社、社債管理会社、証券保険振替機構等の多数のプレーヤーが存在します。

まず投資家からの購入申し込みを証券会社が担い、社債権者のために、債権の弁済を受領し、債権の回収を容易にするなど社債の管理を社債管理会社が、そして決済照合を証券保管振替機構が行います。

このように、多くのプレーヤーが介在することによって、必然的に債権を発行することにコストがかかってしまうことになります。

この全てのプロセスを、ブロックチェーン技術を用いた分散型台帳において一括管理をすることができれば、債権発行に関するコストを低減することができ、より効率的な債権の発行が可能になります。

最終的に、資金需要者が投資家から多くの資金を調達することが可能になります。

仮に将来的にブロックチェーンを用いた金融商品発行のプラットフォームが整備された場合、仲介業者である証券会社等のプレゼンスが下がっていくことが想定されます。

ブロックチェーン金融が目指す未来

前述の通り、ブロックチェーン債によって、証券会社等のプレゼンスが債権発行において低下することが考えられます。

今回は検討はされたものの導入はされなかった、「トークンによる債権発行」が次段階で行われると、この話はさらなる飛躍を遂げることができます。

それは、「金融の利用可能性の拡大」です。

ブロックチェーンを用いた新たな金融システム、「ブロックチェーン金融」によって、金融の利用可能性を拡大することのできる、新たな金融システムを作ることのできる可能性があります。

金融の利用可能性とは、「アイデアと資金を結びつける機会」のことと捉えられます。

既存の金融機関が仲介する金融システムにおいては、どれだけ良いアイデアがあっても、そのアイデアを実現する資金を調達するためには、金融機関に信用を勝ち取る必要がありました。

既存の金融機関は、もちろん営利団体なので自分の利益を最優先に考えることら、例えばリスクの大きいプロジェクトには十分な資金を供給しない、今までの信用がない貸し手には貸し渋る、という事態が起こりました。

実際に、ファイナンスの名著である「Saving capitalizm from capialist」では、資金調達のためには発展していない金融システムの下では「担保」と「コネ」が必要である、と述べられています。

つまり現状の金融システムでは、担保とコネを用意するこのできる資本(お金)が元からないと、資金調達をし辛いとされています。

担保とコネがなくても、優れたアイデアと資金を結びつけるためのアイデアはないのでしょうか?

ブロックチェーンでは、

  • ネットワークの誰でも資金需要者の情報にアクセスできること
  • データが不正に改ざんできなことから、資金需要者の情報が信用できること
  • 仲介者ではなく、ネットワークの参加者が資金需要者の評価をすること
  • ネットワーク上に資金の出し手が多くいること

以上などの理由から、元から資本がなくても金融の利用可能性を拡大する新しいプラットフォームの実現が可能になるかもしれません。

現状のクラウドファウンディンでも、資金需要者が多くの人々から資金を調達することができることから類似している点もあります。

しかし、純粋に仲介者が存在せずに、ネットワークによりその資金調達システムが実現できることから、

  • 純粋にその資金需要者の評価やアイデアが資金調達の可能性につながること
  • より低い手数料で資金調達ができること

このような点において、より優れた金融システムに昇華させることが可能になると考えられます。

 

ブロックチェーン金融システムの阻害要因

このようなシステムが実現出来る可能性がある一方で、その発展を阻害する可能性のある要因があります。

それは「既存の金融機関」です。

彼らは、既存の金融システムから利益を享受しているので、その発展から失われる利益を防ぐために、その発達を遅らせてくることが想定されます。

実際に、世界銀行が2000年に発行した「e-bond」は、全てネット上で取引可能という特性を持っていたにもかかわらず、金融の慣習に合わないという理由で金融業界に根付きませんでした。

このように、ブロックチェーン金融システムの発展にも、金融業界による大きな干渉が予想されます。

ブロックチェーン金融の現実的な解

現実的な解として考えられるブロックチェーン金融システムは、「金融機関の発行した暗号通貨による資金調達システム」でしょう。

例えば、三菱UFJFGは、「MUFGコイン」という暗号通貨の実用テストを行っています。

このような金融機関の発行した暗号通貨を用いた金融システムであれば、ブロックチェーン金融の成し遂げる特性を保ちつつ、既存の金融機関の新たな収益機会の創出にもつながります。

おそらく、今後の数年間においてこのような動きが生まれてくることが想定されます。

ブロックチェーン金融のこれから

ここまで、ブロックチェーン債の発行から、ブロックチェーン時代の金融システムに関する1考察をまとめました。

ブロックチェーンは決済手段としての暗号通貨以上に、金融システムそのものを変えることのできる可能性が内包されています。

それは、ブロックチェーンには「仲介者が存在せずとも、相手を信頼して取引のできるシステム」が備わっているからです。

ブロックチェーン金融は劇的な変化を起こせる一方で、既存の金融機関とうまく付き合って発展させていく必要もあります。

まずはブロックチェーン債の今後に着目していくことで、今後ブロックチェーンがどのように金融システムに浸透していくかを注目していく必要があるでしょう。